「友人に『すごく当たる占い師がいる』と勧められたけど、本当かな?」「高額な料金を払って、もし外れたら…」
そんな風に、占いに興味はあるけれど、その非科学的なイメージから一歩踏み出せないでいませんか?特に、普段から論理的な思考を大切にされている方なら、なおさらでしょう。
その懐疑心、非常に健全であり、知的探求の第一歩です。この記事では、認知心理学の専門家である私が、占いが「当たる」と感じる心の仕組みを科学的に解説し、あなたが占いに時間やお金を費やすべきかどうかを冷静に判断するための材料を提供します。
この記事を読み終える頃には、なぜ占いが当たるように感じるのか、そのカラクリが分かり、占いの本当の価値とリスクを理解し、あなた自身に占いが必要かどうかの明確な判断基準が手に入っているはずです。
この記事を書いた人
結城 慧(ゆうき けい)/認知心理学者・ライター
博士(心理学)。人間の意思決定プロセスや認知バイアスを専門とし、大学で教鞭をとりながら、科学的知見を社会に還元するための執筆活動を行う。「信じるか、信じないか」の二元論に陥らず、物事の背後にある心の仕組みを解き明かすことを信条としている。博士(心理学)の専門的知見から、中立的な立場で解説します。
なぜ占いは「当たる」と感じるのか?心理学が解き明かす3つのカラクリ
「占いは当たるのか?」― この問いに答える前に、まず「なぜ私たちは、占いを『当たる』と感じてしまうのか」という、心(認知)の仕組みから解き明かしていきましょう。あなたが「当たった!」と感じるその感覚は、実は科学的に説明できる、いくつかの心理効果によって巧みに作り出されています。
その代表格が、以下の3つです。
- バーナム効果:誰にでも当てはまることを「私のことだ」と思い込む
これは、「あなたは普段明るく振る舞っていますが、心の中に繊細な一面を隠していますね」といった、誰にでも当てはまるような曖昧な性格描写を、あたかも自分だけに向けられた的確な指摘であるかのように錯覚してしまう心理効果です。占いが「当たる」と感じる感覚の、まさに中核をなすのが、このバーナム効果です。多くの人が持つ共通の悩みを指摘されると、私たちは「言い当てられた」と感じてしまうのです。 - コールドリーディング:相手の反応から情報を引き出す会話術
優れた占い師は、巧みな観察者でもあります。あなたの服装、話し方、些細な表情の変化から情報を読み取り、「もしかして、最近人間関係で悩んでいますか?」といった質問を投げかけます。あなたが少しでも反応すれば、その方向で話を掘り下げていく。このように、事前の情報なしに、相手との会話や観察から情報を引き出していくテクニックが「コールドリーディング」です。 - 確証バイアス:自分に都合の良い情報だけを信じる
一度「この占いは当たるかもしれない」と思うと、私たちの脳は、その考えを裏付ける情報ばかりを無意識に探し始めます。 占い師に言われた10個の事柄のうち、9個が外れていても、当たった1個の事柄だけを強く記憶し、「やっぱりこの占いは当たった」と結論づけてしまう。この心の偏りを「確証バイアス」と呼びます。
これらの心理効果が組み合わさることで、「占いが当たった」という強烈な感覚が生まれるのです。

では、占いは無価値か?―「当てる」以外の、占いが持つカウンセリング効果
「なんだ、占いはただの心理トリックか」― そう結論づけるのは、少し早いかもしれません。
正直に告白すると、私自身もかつては占いを「非科学的な迷信」と一蹴していました。しかし、なぜこれほどまでに多くの人が、時代を超えて占いに惹きつけられるのかを研究するうちに、その考えは変わりました。
占いの本質的な価値は、未来を正確に「当てる」ことにあるのではありません。むしろ、信頼できる専門家(占い師)との対話を通じて、自分の悩みを言語化し、思考を整理するプロセスそのものに価値があるのです。
これは、心理学における「カウンセリング」と非常に似た機能を持っています。占いとカウンセリングは、どちらも専門家との対話を通じて自己理解を深める点で共通していますが、その根拠が占術か心理学か、そしてゴールが未来の提示か自己の成長か、という点で異なります。
誰にも相談できずにいた悩みを言葉にすることで、自分でも気づかなかった本心が見えてくる。そして、占い師から提示された「鑑定結果」という名のストーリーが、次の一歩を踏み出すための「きっかけ」や「勇気」を与えてくれる。
つまり、占いの本当の価値とは、未来予知ではなく、自分自身と向き合うきっかけ、すなわち「自己分析」の入り口にあると言えるのです。
占いに潜むリスクと注意点―「占い依存」が引き起こす消費者トラブル
しかし、占いのカウンセリング的な側面を評価する一方で、そのリスクにも目を向けなければなりません。最も警戒すべきは、自分の頭で考えることをやめ、あらゆる決断を占いに委ねてしまう「占い依存」の状態です。
この占い依存は、時として深刻な消費者トラブルに直結します。 独立行政法人国民生活センターには、占いサイトや占いアプリに関する相談が数多く寄せられており、「占い師に『不幸を避けるにはこのアイテムが必要だ』と高額な商品を売りつけられた」「不安を煽られ、次々と高額な鑑定料を支払ってしまった」といった事例が報告されています。
占いサイトで無料鑑定をしてもらったところ、「あなたは霊に憑かれている」「このままでは不幸になる」などと占い師から言われ、除霊や運勢を良くするための祈祷に高額な料金を支払ってしまった。(一部抜粋)
出典: 占いサイトに関する相談 – 独立行政法人国民生活センター
「当たる/当たらない」という結果に一喜一憂し、自分の人生のハンドルを他人に明け渡してしまうこと。これこそが、多くの人が陥りがちな、そして最も避けるべき失敗パターンなのです。
【実践編】後悔しないための占いとの付き合い方|4つのチェックリスト
これまでの解説を踏まえ、あなたが占いを利用すべきか、そしてどう利用すべきかを判断するための、具体的なチェックリストを4つのポイントで提案します。占いを試す前に、ぜひ自問自答してみてください。
- 【目的】未来を「当てて」欲しいのか?思考を「整理」したいのか?
もし前者であれば、占いに過度な期待を抱いている可能性があり、危険です。後者のように、あくまで自分の考えをまとめるための「壁打ち相手」として利用する目的なら、有益な時間になるでしょう。 - 【占い師】あなたの不安を煽っていないか?料金体系は明確か?
「このままでは不幸になる」といった言葉であなたを脅したり、不明瞭な料金体系で次々と課金を促したりする占い師は、明確に避けるべきです。あなたの話に真摯に耳を傾け、ポジティブな行動を促してくれる相手を選びましょう。 - 【結果の捉え方】「絶対的な予言」と捉えていないか?
鑑定結果は、あくまで「数ある可能性の一つ」であり、あなたの行動を変えるための「ヒント」です。悪い結果が出ても過度に落ち込まず、「注意すべき点がわかって良かった」と前向きに捉える冷静さが必要です。 - 【最終判断】最後に決めるのは「自分だ」という覚悟があるか?
最も重要な点です。占い師はアドバイザーであって、あなたの人生の決定者ではありません。どんなアドバイスを貰ったとしても、最終的にどう行動するかを決めるのは、あなた自身です。
占いとの付き合い方比較:賢い使い方 vs 危険な使い方
| 項目 | ◎ 賢い使い方(自己分析ツール) | × 危険な使い方(占い依存) |
|---|---|---|
| 目的 | 思考の整理、自己理解を深める | 未来を当ててもらう、決断を委ねる |
| 占い師の選び方 | 傾聴力があり、前向きな助言をくれる | 不安を煽り、高額な商品を勧める |
| 結果の捉え方 | 行動のヒントとして、主体的に解釈する | 絶対的な予言として、一喜一憂する |
| 最終判断 | 自分自身で行う | 占い師の言う通りに行動する |
まとめ:「当たる占い」を探すのをやめたとき、未来はあなたの手に戻ってくる
この記事では、占いが「当たる」と感じる心理的な仕組みから、その本質的な価値、そして潜むリスクまでを、科学的な視点から解説してきました。
- 「当たる」という感覚は、「バーナム効果」などの心理効果によるものが大きい。
- 占いの価値は未来予知ではなく、思考を整理する「カウンセリング」的な側面にある。
- しかし、結果に依存し始めると、「占い依存」や「消費者トラブル」のリスクがある。
占いは、未来を「決めてもらう」ためのものではなく、あなたがより良い未来を「自分で作る」ためのヒントを与えてくれるツールの一つに過ぎません。
もしあなたが今、誰かに話を聞いてもらうことで思考を整理したいと感じているなら、占いを試す前に、地方自治体が設けている公的な相談窓口や、臨床心理士による専門的なカウンセリングも、有効な選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
あなたの知性が、あなたをより良い未来へ導くことを願っています。
[参考文献リスト]
この記事を作成するにあたり、以下の情報源を参考にしました。
- 独立行政法人国民生活センター「占いサイトに関する相談」
- J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)に掲載されている認知心理学関連の論文


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