この記事を書いた人
佐藤 ゆうか
公認心理師 / カップルカウンセラー
オンラインカウンセリングサービスにて、年間500件以上の恋愛やパートナーシップに関するご相談に応じています。専門は愛着理論に基づくカウンセリングで、特に「関係性の不安」を抱える方々が、自分らしい一歩を踏み出すためのサポートを得意としています。この記事では、専門家として一方的に「正解」を教えるのではなく、あなた自身が心の中にある答えを見つけるプロセスに、優しく寄り添う「伴走者」としてお話しします。
「彼との関係、このままでいいのかな…」
一人で悩み、スマートフォンの画面に映る占いの結果に答えを求めてしまう夜。その不安な気持ち、痛いほどわかります。
でも、本当の答えは占いの結果にはありません。あなた自身の心の中にあります。
この記事は、巷にあふれる占いサイトではありません。公認心理師である私が、恋愛心理学の観点からあなたの不安の正体を解き明かし、彼との関係に「自分で」納得のいく答えを出すための「心のコンパス」を手渡すためのものです。
この記事を読み終える頃には、漠然としていた不安の正体が分かり、明日から何をすべきかが明確になっているはずです。
なぜ私たちは「占いの言葉」にすがりたくなってしまうのか?
カウンセリングの現場で、私が最も多くお受けするのは「彼の気持ちが分かりません」というご相談です。相手の気持ちという、自分ではコントロールできないものに未来を委ねている状態は、本当に苦しいものですよね。
このような強い不安を感じている時、私たちが占いに答えを求めてしまうのは、決して心が弱いからではありません。むしろ、それだけ真剣に相手を想っている証拠です。この行動の背景には、「見捨てられ不安」という、誰もが持つ自然な感情が隠れています。
「見捨てられ不安」とは、文字通り「大切な人に見捨てられたらどうしよう」という強い恐れのことです。この「見捨てられ不安」という感情が、不確実な未来を少しでも早く確定させたいという欲求に繋がり、結果として占いに依存しやすい状況を生み出します。
ですから、占いを信じてしまう自分を責める必要は全くありません。それは、苦しい状況から抜け出したいと願う、ごく自然な心の動きなのです。
あなたの不安の正体はこれ。関係を支配する「不安の悪循環」を断ち切る方法
それでは、その「見捨てられ不安」は、具体的に彼との関係にどのような影響を与えているのでしょうか。
実は、強い「見捨てられ不安」は、二人の間の健全なコミュニケーションを歪めてしまうという、非常に厄介な性質を持っています。そして、多くの場合、知らず知らずのうちに以下のような「不安の悪循環」に陥ってしまうのです。
- 不安の高まり: 彼からの連絡が少し途絶えただけで、「嫌われたのかもしれない」という強い不安に襲われます。
- 試し行動: 不安に耐えきれず、「私のこと、もう好きじゃないの?」と問い詰めたり、わざとそっけない態度をとったりして、彼の愛情を試すような行動に出てしまいます。
- 相手の疲弊: 最初は優しく対応してくれていた彼も、繰り返される試し行動に次第に疲れ、距離を置くようになります。
- 関係の悪化: 彼のそっけない態度が、あなたの「やっぱり嫌われたんだ」という思い込みを強化し、二人の間の溝はさらに深まります。
- さらなる不安: 関係が悪化したことで、あなたの「見捨てられ不安」は頂点に達し、さらに強い試し行動に出てしまう…。
この悪循環は、一度はまってしまうと、なかなか一人では抜け出せません。このサイクルを断ち切るためには、まず「自分が今、このサイクルの中にいるかもしれない」と客観的に認識することが、何よりも重要な第一歩となります。

もう一人で悩まない。関係性を見極める「3つの心のコンパス」
自分が「不安の悪循環」に陥っている可能性に気づけたら、次はそのサイクルから抜け出し、冷静に関係性を見つめ直す番です。
ここでは、占いに頼らずに、あなた自身で答えを見つけるための具体的な「3つの心のコンパス」をご紹介します。
コンパス1: 「危険」と「安全」のサインを見分ける
まずは、二人の現在の関係性を客観的に評価してみましょう。以下のチェックリストを使って、彼の言動がどちらのサインに多く当てはまるか、冷静に振り返ってみてください。
関係性を見極める「危険信号」と「安全信号」のチェックリスト
| 危険信号 🚨 (見直しが必要かも) | 安全信号 ✅ (まだ希望は持てるかも) |
|---|---|
| あなたの意見や感情を頭ごなしに否定する | あなたの意見を尊重し、真剣に耳を傾けてくれる |
| 二人で過ごす将来の話を、一貫して避ける | 将来について、具体的な計画はなくても話そうとする姿勢がある |
| あなたの容姿や人格をからかったり、見下したりする言動がある | 小さなことでも「ありがとう」「ごめんね」を言葉にしてくれる |
| 問題が起きると、話し合わずに無視したり、一方的に怒ったりする | 問題が起きた時、感情的になっても最終的には話し合おうとする |
| あなたが他の友人と会うことを嫌がったり、行動を束縛したりする | あなたのプライベートな時間や人間関係を尊重してくれる |
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: チェックリストの結果だけで、関係を白黒つけないでください。
なぜなら、このチェックリストの本当の目的は、関係に点数をつけることではなく、あなたが「何に不安を感じているのか」を具体的に言語化するための手助けだからです。「危険信号」にチェックがついたとしても、それが一時的なものなのか、それとも継続的なものなのかを見極めることが重要です。この知見が、あなたの冷静な判断の助けになれば幸いです。
コンパス2: 自分の気持ちを伝える「Iメッセージ」を使ってみる
関係改善の可能性があると感じたなら、次に行うべきはコミュニケーションの見直しです。特に、健全なコミュニケーションを促進する具体的な手法として、「Iメッセージ」は非常に有効です。
「Iメッセージ」とは、「私(I)」を主語にして、自分の感情を正直に伝える方法です。相手を責めるニュアンスがなくなるため、相手もあなたの気持ちを受け入れやすくなります。
- よくある失敗 (Youメッセージ): 「あなたは、どうして連絡をくれないの?」(相手を非難しているように聞こえる)
- おすすめの方法 (Iメッセージ): 「私は、あなたから連絡がないと、寂しくて不安な気持ちになるんだ。」(自分の感情を伝えている)
この「Iメッセージ」を使って、一度あなたの素直な気持ちを伝えてみましょう。彼の反応は、関係性を見極める上で重要な判断材料になるはずです。
コンパス3: 「もし親友が同じ状況なら?」と自問してみる
自分のことになると、どうしても感情的になり、視野が狭くなってしまいがちです。そんな時は、一度自分から離れて、客観的な視点を取り戻すための思考実験をしてみましょう。
「もし、私の大切な親友が、今の私と全く同じ状況で悩んでいたら、私は彼女に何とアドバイスするだろう?」
このように自問自答してみてください。不思議なことに、友人に対してなら、驚くほど冷静で的確なアドバイスが思い浮かぶものです。そのアドバイスこそが、あなたの心の奥底にある「本当の答え」に最も近いものかもしれません。
よくあるご質問
Q. それでも、悪い結果が出たらと考えると行動するのが怖いです。
A. そのお気持ちは、非常によく分かります。しかし、現状維持を選んでも、不安な気持ちが消えるわけではありません。行動しないことで得られる一時的な安心と、勇気を出して行動することで得られる長期的な心の平穏、どちらがあなたにとって本当に大切か、考えてみてください。どんな結果になっても、自分で決断したという事実は、必ずあなたの自信に繋がります。
Q. 彼に話し合いを切り出して、嫌われたらどうすればいいですか?
A. もし、あなたの誠実な「Iメッセージ」に対して、彼が聞く耳を持たなかったり、馬鹿にしたりするような態度をとるのであれば、その関係性そのものを見直す時期に来ているのかもしれません。あなたの気持ちに真摯に向き合ってくれないパートナーと、この先の長い人生を共に歩んでいけるでしょうか。
Q. 専門家への相談はハードルが高いです。
A. 確かに、カウンセリングと聞くと身構えてしまうかもしれませんね。しかし、最近はオンラインで気軽に話せるサービスも増えています。利害関係のない第三者だからこそ、話せることもたくさんあります。友人に愚痴を言うのとは全く違う、思考が整理されていく感覚を体験できるはずです。初回は無料で相談できる場所も多いので、選択肢の一つとして考えてみることをお勧めします。
まとめ:あなたの人生のハンドルを、占いに明け渡さないで
この記事では、「怖いほど当たる占い」を探してしまう心理的背景から、占いに頼らず自分自身で答えを見つけるための具体的な3つのステップまでを解説しました。
- 不安の正体: 占いにすがりたくなるのは、「見捨てられ不安」という自然な感情から。
- 悪循環の認識: 不安が、知らずのうちに関係を悪化させる悪循環を生んでいないか客観視する。
- 3つのコンパス: 「サインの確認」「Iメッセージ」「客観的な自問」を使い、自分の心と向き合う。
健全な自己肯定感を持っている人は、勇気を持って関係性の見直しができます。そして、その経験がさらに自己肯定感を高めてくれます。 どちらの道を選んだとしても、「自分で決めた」という事実が、あなたの未来を強く、そして確かに支えてくれるはずです。
あなたの人生のハンドルを、占いに明け渡さないでください。
まずは今日、あなたの不安な気持ちを、誰にも見せないノートに書き出すことから始めてみませんか?それが、あなた自身の心の声を聞く、最初の、そして最も重要な一歩です。
参考文献リスト
この記事を作成するにあたり、以下の専門機関の知見を参考にしました。情報の透明性を担保するため、ここに明記いたします。
- うららか相談室 – 臨床心理士など有資格者が多数在籍するオンラインカウンセリングサービス
- NPO法人 日本結婚カウンセリング協会 – 内閣府認証の婚前・夫婦関係に特化したカウンセリングを提供するNPO法人

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